Mar07,2009

#189 Stool no.60

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アルヴァ・アアルト[Alvar Aalto]デザインのアルテック[artek]製スツール / Stool no.60

 1932年の発表以来、これまでに何百万本も生産されてきたアアルトのスツール60。フィンランドデザインを代表するロングセラーの一つです。
 あらゆる意味で完成されたデザイン。スタッキング、組み立て式といった機能性に加え、自国のバーチ材を利用するために発案された曲げ木のフレームは美しさと堅牢性を兼ね備えています。その数々の素晴らしさは、これまでに語り尽くされてきているところです。
 シンプルな造型ゆえに数多くの類似製品が作られてきましたが、アアルトデザインには唯一の存在と思わせる力がありますね。
 実は、バーチ材の白っぽい色合いがあまり好きではなくて、デザインがいいのは分かるけど好みじゃないかなと、昔は思っていました。でも、モダン・レトロ[Modern Retro]に掲載されていたヴィンテージのスツールとテーブルを見てから心変わりしました。飴色っぽくなった色合いと、凹みや擦れで丸みを帯びた縁まわりの風合いが、本当にカッコよくて、これは使い込むのが似合うのだと気づかされました。
 また、近年、アルテック[artek]がセカンド・サイクル[2nd Cycle]と称して、古いスツールを集め、再販する取組みをしています。面白いのが、ただ売るのではなくて、タグをつけて前の所有者のことが分かるようにしており、さらに新たな所有者となった自分のことも登録できるようにしてあります。長く愛されるモノは、人の手を巡りながら、色々な場所で様々な使われ方をしてきた、いわば歴史がある訳です。骨董品等の場合ですと、言い伝えであったり、または想像であったりしながら、その歴史や伝来を楽しんだりしますよね。同じようなことをタグによって実現しています。アルテック自身が行うことにより、鑑定書のような役割も果たしますね。ストーリー性を付与して、消費から循環へと誘う仕組みのようです。
 その取組自体も興味深いのですが、アルテックが集めたスツールのカッコいいこと。公共施設や学校で長年使われてきたモノの中には、キズだらけになり、塗装が剥げ落ちてしまったモノもあります。シャビーシックのような枯れた味わいもありながら、モダンでクールな一面とヴィンテージらしい温かみ、そして力強さを感じます。とことん使い込んだ、古道具の味わいですね。
 自分で新品から使い込むのには相当な年数が必要なので、いい感じにボロボロになった中古品があればと考えました。北欧系のヴィンテージ屋さんが古いスツールを仕入れているのを時々見かけるものの、結構コンディションが良くて、思うような雰囲気のモノがありません。あれだけ量産されたモノなので、ありさそうなものなのですが、やはり業者さんはコンディションが悪いモノを避けてしまうのかなぁ。
 思うようなモノがなかなか見付けられず、しばらく過ぎて探すのも止めていた頃、ふと出会いました。以前からチェックをしていた宮脇モダンさんのブログ「フランス古道具 ウブダシ」で発見。商品らしく登場したのではなく、メダカを入れた睡蓮鉢を窓際に置くための台として使われていました。部分的にしか写っていなかったので、アアルトのモノなのか確信が持てなかったのですが、相当に使い込んでいる感じは伝わってきました。
 数ヶ月間、どうしようかなぁと悩んでいたのですが、たまたま宮脇モダンさんが神戸で展示会をすることになったと聞いて、何かの縁かと思い、メールをしました。やはりアアルトのスツールで、個人的に使っていたモノだったのですが、譲っていただけました。
 キズや凹みだけでなく、塗装のひび割れにシミなどもあり、なかなかの試練を乗り越えてきた貫禄。正にこういう雰囲気のモノを探していました。座面端の一部が薄くはがれている点だけは、やや難ありか…。リペアをした上で、さらに使い込んで、古道具らしさを出す方がよいのか、それともあえてこのまま使い続けるのがカッコいいのかなどと思案中。
 バリアフリーで段差がほぼない我が家の玄関で、靴の脱ぎ掃きの際に腰掛けるために置いています。Mamiがブーツを履くのに便利かなと考えてもいたのですが、もっぱら使うのは腰痛持ちのTetsuの方でした。また、フラットな座面は手荷物を置くためのスペースとしても活躍しています。それほど玄関が広くないので、少し狭くなったと感じることもありますが、なかなか便利に使っています。

Memo:
 アルヴァ・アアルト[Alvar Aalto]はフィンランドの建築家、デザイナー。建築、家具、ガラス食器から絵画まで多彩な分野で活躍しました。北欧の近代建築家としてもっとも影響力のあった一人です。1898年フィンランド中西部のクオルタネで出生。測量技師の父と営林職員の母方の祖父などの影響で、小学校入学前から建築家を夢見ていました。1921年ヘルシンキ工科大学卒。卒業後ユヴァスキュラで「建築・モニュメンタルアート事務所 アルヴァ・アアルト」を開設。1924年に同じく建築家のアイノと結婚。初期の作品は新古典主義でしたが、モダニズムへと転じます。1929〜33年設計のパイミオのサナトリウムにより、建築家としての地位を確立。北欧においてモダニズム建築が台頭するきっかけになった作品の一つです。また、このサナトリウムのプロジェクトによって、彼の本格的な家具設計が始まりました。サナトリウム用に作られたアームチェア(パイミオチェア)により、家具デザイナーとしても一躍有名に。その後、一連のスツールを次々とデザイン。自作の家具を国内外に販売するため、1935年、妻アイノ・アアルト[Aino Aalto]、マイレ・グリクセン[Maire Gullichsen]、ニルス・グスタフ・ハール[Nils-Gustav Hahl]と共にアルテック社を設立。一方で、建築家としての地位を不動のものとし、1943年にはフィンランド建築家協会の会長に選任、1955年にはフィンランド政府からフィンランド・アカデミー会員に選任され、1963〜68年にはその会長職を務めるなど、晩年まで多忙の人でした。ユーロ導入まで使用されていた50フィンランド・マルッカ紙幣に肖像が描かれていたほどの国民的英雄です。


posted by Mami & Tetsu at 14:02 | Comment(3) | TrackBack(0) | 家具>家具
この記事へのコメント
こんにちは。そういえば!ありましたね。お玄関に。荷物置きにしていましたスツールね。
こんなエピソードが背景にあったとはね・・
すっごく馴染んでたよ。使い道と言い、立ち姿?といい。
まだまだ あるんだろね・・エピソード。
楽しみっす。
Posted by luas at 2009年03月12日 11:41
Mami&Tetsuちゃん、こんにちは!
アルテックのその企画知らなかったよー
いい企画だなぁ〜。ものを使い捨てるんじゃなくって巡らせる。しかも使っていた人の歴史と共になんて。カッコイイしすばらしいね。
私は時々死ぬ前に食器棚のヴィンテージ北欧食器を売りに出そうかなぁなんて時々考えてます。北欧の食器が大好きですっていう人ならこの先大切にしてくれそうだし。一生懸命集めたから時々そんなこと考えてます。(変でしょ。)
Mami&Tetsuちゃんの譲ってもらったスツールいい感じの味が出てるね。拡大写真見ましたよー
ご縁があってやってきたとしか思えませんね!
Posted by トム at 2009年03月12日 18:58
luasさん、そうそうあれです。
古いモノは、昔からそこにあるみたいに馴染んでくれるのがいいんよね〜。
ピカピカしてると、何だか照れくさい?感じもしてしまって。
何気なく使われているけど、でも実はアアルトってのがTetsuのこだわりらしいです…。


トムちゃん、元気?風邪は治った?
気持ちよく分かるよ!
うちも旅行に行く時に「もし飛行機が墜落して二人とも死んでしまったら、あそこのお店の人に家のモノを買い取ってもらって。」と家族に伝えてるぐらいで…。
ほっておいたら捨てられちゃうかもしれないもん。
自分も誰かが使っていたモノを引き継いでいるし、もしもの時は大切にしてくれる次の人に渡って欲しいよね。
Posted by Mami & Tetsu at 2009年03月14日 12:35
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